蒸気機関車の乗車体験もできる!北海道初の官営幌内鉄道の跡地に作られた「三笠鉄道記念館」を訪れる
はい、皆さんこんにちは。いんたらくとです。
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三笠市民会館からバスで約8分
三笠市民会館前から三笠鉄道記念館までは三笠市営バスで約8分です。たった8分と言えども侮ることはできません。幾春別も幌内もずっと緩やかな登り坂が続きます。距離は札幌駅からすすきのまでと同じ約3.8kmとさほど遠くはないのですが、山登りが続くので歩いて訪れるのは大変です。
乗車する際に運賃箱に運賃の1回200円を投入します。運賃箱と言っても透明な箱に各自で投入するだけなので、ちょうど持っていないときは停車しているときに運転手さんに両替してもらう必要があります。電子マネーとしてWAONが使えるようになっていました。三笠には高速道路沿いにイオンがあるので、それに関連してWAONも使えるようになっているようです。
鉄道から代替路線バスになり、市営バスと言ってもコミュニティバス言ったほうが実態に近いのではないかと思います。マイクロバスで運行されていたそうですが、現在ではバンタイプの車両で運転されています。遠くから見ればタクシーと変わりませんが、タクシーと比べるとだいぶ安価に移動できるので、とっても便利な路線です。強いて言えば、希望があった場合のみ『幌内炭鉱景観公園』まであと約500mを延長して運転してくれると観光には便利なのかなと思います。
バスを降りると早速SLが走っている
市営バスのバス停は入り口から少し離れたところにあるのですが、入り口に向かって歩いていると蒸気機関車が走ってくるのが見えました。幌内まで来る人はほぼ確実に三笠鉄道記念館を目的として来ているので、テーマパークのような高い柵は必要無いのかもしれません。屋外展示の車両は敷地外からも見えるようになっています。
三笠鉄道記念館で動態保存されているS-304号機は室蘭にある製鉄所にて貨物列車の入れ替え作業を担っていた蒸気機関車です。体験乗車したり運転体験したり、まだまだ現役の機関車となっています。体験乗車の時間ではないはずの時間に走行しているということは、誰か機関士の訓練を行っているのかもしれません。
乗車体験は乗るだけなのですが、運転体験については事前に申し込みした上で一定の訓練を受ける必要があります。初回の訓練を受けると鉄道記念館の見習いSL機関士になることができます。訓練回数が増えると徐々にランクアップして、一人前と認められると指導無しで運転できるようになるそうです。民間資格ではありますが蒸気機関車の機関士として、実際に廃線となった幌内線の一部を走行することができます。
三笠鉄道記念館
三笠鉄道記念館は北海道三笠市の幌内にある幌内線の跡地を整備して1987年に開館した交通博物館です。幌内は、北海道で始めて鉄道が敷設された官営幌内鉄道の山側終着地となっており、海側の終着地である小樽まで石炭を輸送していました。ちなみに、小樽にも小樽市総合博物館という鉄道記念館があります。どちらも同じ時期に作られた鉄道で、どちらも末端部分はすでに廃線となっているという点で共通しています。
SL乗車体験
SL乗車体験は1人1回300円です。土日祝日及び夏休みの期間中は毎日30分間隔で運行しています。路線バスよりも本数が多い約30分間隔で運転しているので、鉄道記念館を訪れた記念に乗車することができるようになっています。今回は8月に訪れたので毎日運転している期間でした。SLならではの石炭の匂いとガタンゴトンという独特な揺れを体験することができます。
入館料
大人 | 530円 |
小人 | 210円 |
入館料は大人530円、小人210円です。館内の展示物を見学する場合は入館料が必要です。屋外展示とSL体験乗車には入館料はかかりません。金額に対して内容はかなり充実していたので、三笠鉄道記念館を訪れた際には、館内の展示室も立ち寄らないともったいないというレベルの良い展示を見ることができます。
エントランスホール
エントランスホールには国鉄時代の看板や小物が展示されています。岩見沢行きも幾春別行きも幌内線で掲げられていたであろう看板です。日豊線経由東京行きという看板は、鹿児島と東京を走っていた日本最長の寝台特急だった『寝台特急 富士』の看板です。
官営幌内鉄道の歴史
大きな石炭の塊が展示されています。三笠では良質な石炭が多く産出されたことから北海道開拓期の資金源として大きな役割を果たしました。三笠鉄道記念館から約500mほど更に山奥へと進むと炭鉱跡が見られる公園があります。山の中に鉄道を敷いた『理由』が残されているので、時間に余裕があったら立ち寄ってみてください。
明治28年3月の路線図では官営幌内鉄道と、室蘭本線、函館本線の滝川~岩見沢間があります。現在では、手宮線と幌内線も廃線、夕張支線も廃線、歌志内線も廃線とこの路線図の末端部分無くなっています。産業構造が変わったと言っても、人口が少ない時でも維持されていた鉄道網であると考えると、今後人口が減ったときにはこの形に近づいていくのかもしれません。
だるまストーブや蒸気機関車の部品などが展示されています。官営幌内鉄道や幌内線として走っていた蒸気機関車についての説明があります。
鉄道の技術
ディーゼルエンジンの仕組みでは、ボタンを押すとエンジンが付いて車輪が回ります。映像ではなく実物が目の前で稼働しているというのはとてもびっくりしました。内部がどう動いていたのかを見ることができます。
信号場の役割についての展示です。古くはタブレット交換方式という、識別札を持ってる車両だけが通れるという方式を採用していましたが、本数が多くなると管理が煩雑になるので、電気式に変わっていきました。電気式の閉塞機は、ある区間に入る時に『使用中』のスイッチを押して、出るときに『解除』のスイッチを押すことで、在線状況を知らせる装置で、上り側下り側の駅で連動するようになっていました。現在ではセンサーで自動的に赤信号に切り替わるようなシステムとなっています。
特殊信号発光機は駅などに設置されている緊急停止用の信号機です。設置されているのは回転式のもので、JR北海道では点滅式の細長い特殊信号発光機の導入が進んでいます。三笠鉄道記念館では特殊信号発光機も点灯させる事ができます。
出発信号機のしくみでは、ボタンを押すと、出発信号がリレー形式で青黄赤と変わっていく様子を見ることができます。
踏切のところのボタンを押すとカンカンという音とともに踏切の遮断棒が降りてきました。ここなら安全にじっくりと踏切が動いている様子を見ることができます。実際の踏切では列車が通るので、事故に気をつけるべき場所ですが、鉄道記念館のなかなら安全です。
歴史や機械のしくみをみたあとは2階へと進みます。メインの展示は1階にまとまっていますが、2階にも少し展示があります。
Nゲージジオラマ
大きなNゲージジオラマがありました。お金を入れて運転台のコントローラーで対応する車両を操作することができるようです。
休憩室
休憩室にはプラレールが走っていました。
古い時刻表や雑誌も閲覧できるようになっています。休憩室では飲食も可能となっているので、この場所でお昼休憩を取ることにしました。
屋外には実物車両の展示
屋内展示を見た後は屋外展示を見るために外へと出ました。建物を出たすぐのところにSL体験乗車ののりばがあります。
大きなラッセル車が止められていました。この大きなラッセル車が現役で動いていたら、雪にも強い鉄道が今でも残っていたのかもしれません。記録的大雪と言えども降雪が少なかった数年間での話なので、大きな除雪用の機械がたくさん動いていれば数日間も止まってしまうということは無かったのかなと思います。
トラックの運転手が少なくなっているという中では一度に大量に運べる郵便車の復活は悪くないのではと思うのですが、鉄道も郵便も民営化して『別会社』となってしまったので、ことはそう単純には進みそうにありません。
車庫の機関車は運転席も見学可能
機関庫では、ED76形電気機関車、DD13形ディーゼル機関車、9600形蒸気機関車が展示されています。機関庫での展示は車両内部も公開されているので、中に乗って運転席に座ったり、機械類を眺めたりすることができます。
ED76 電気機関車
ED76形電気機関車は廃車が進んで全国でも数少ない保存機となっています。幌内にあるのは、ED76-505です。
車内の一部設備はほぼ現役時のまま公開されているのですが、一部の機器は安全上の事情から取り外されています。パンタグラフから取り込まれた電気は、変圧器、交流直流変換装置、モーターという順番に機器を通るそうです。後ろあるのが交直変換装置だとすると、手前にあったであろうはずのものとすれば、おそらく変圧器かなと思われます。
小樽総合博物館に展示されていたED75 501とED76 509は、変圧器に現在禁止されているPCBが使用されており、解体処分される見込みとなっています。小樽にあるED76 509と幌内にあるED76 505は同時期に製造され活躍した兄弟機と言っても過言ではありません。長いこと保存されてきた車両なのに、一方は残り一方は解体されることとなりました。元々の完全な状態で残すことも大切ですが、安全面も配慮しつつ時代に合わせた適切な管理を行うことの重要さをしみじみと感じました。
DD13 ディーゼル機関車
DD13形ディーゼル機関車です。機械類は前のボンネットの中に収められているので、空間としてはとても広く感じます。電気機関車が装置に囲まれてとても狭かったことを考えると、ディーゼル車は空間の面では良好です。
前にも後ろにも進むことができるように運転席は横向きについています。進む方向に応じて体の向きを右にするかひだりにするかで操作します。どちらにも対応できると聞くと面白いとおもったのですが、いざ運転席に座ってみて思ったのはやはり走る方向を向いている方が良いかなという印象でした。
後継である電気機関車は前後の運転台になっていたので、結果としても横向き運転台はあまり人気がなかったのかもしれません。
9600形 蒸気機関車
9600形蒸気機関車です。プレート記載の番号は幌内線の運行最終日にも運転されていた59609号車という事になっていますが、廃車後の管理が良好とは言えず、実際には29622号車という説もあります。蒸気機関車はとにかくレバーが多くて操作は大変そうです。
ディーゼル機関車のシミュレーター
ディーゼル機関車の構造を学ぶための装置で、実際に函館で訓練に使われていたものだそうです。シミュレーターなので、正常時と故障時の動作を切り替えできるボタンが付いています。試しにあるボタンを操作してみるとジリジリという聞いたことがあるようなアラームが鳴りました。
食堂車レストラン
食堂車を利用したレストランがあります。訪れた時は臨時休業していたので営業している様子は見ることができませんでしたが、そばやうどんとラーメンなどのメニューがあります。幌内駅の駅弁とも言える『ジオ弁当』というお弁当もあります。ただし、ジオ弁当は事前に予約が必要なメニューと記載されていたので、訪れる際には問い合わせをしてください。
バスを乗り継いで札幌へ帰る
坂の上から三笠市営バスのバンが走ってくるのが見えました。三笠市営バスは定時運行性が高く時間通りに走ってくるという点ではとても優れていると思います。帰りは来た道を引き返す形になります。
幌内線の代替バスとして中央バスの路線バスが走っていた時は、幌内から岩見沢ターミナルまで乗り換え無しで行けたそうなのですが、今では三笠市民会館で乗り換えが必要です。
岩見沢ターミナルまで到着すれば高速バスの本数も朝から夜まで本数があるのでもう安心です。鉄道も札幌と旭川間の特急が多数走っているので、ここからよっぽど交通事情が悪化しない限りはほぼ札幌まで着いたも同然です。
おわりに
官営幌内鉄道の終端だった幌内にある三笠鉄道記念館を訪れました。三笠鉄道記念館はSL乗車体験や運転体験もできるとても貴重な博物館です。機関車の内部も見学できるように公開されているというのは他では珍しいとても凄い施設だと思います。高速バスと路線バスを乗り継いで訪れることになるので、札幌からは行きにくい場所にあるのですが、鉄道好きなら満足できる場所に違いありません。鉄道が好きな方や蒸気機関車を運転してみたい方はぜひ訪れてみてください。