データとアートの融合で近未来的!札幌国際芸術祭2024「未来劇場(東1丁目劇場施設)」会場レポート
はい、皆さんこんにちは。日常生活が楽しくなる情報をお伝えすることを心がけている、旅する写真家のいんたらくとです。
目次
映像作品を放映する地下公園
札幌国際芸術祭2024の未来劇場会場へと向かう途中で、サテライト会場の『地下公園』会場を通りかかりました。展示のタイトルは『Climatic Reflector』です。一連の映像のなかで共通しているのは、映像内で出てくる線は『地球の気候変動のデータ』を元に『増加』や『減少』という値の動きを視覚的に表現したものだそうです。
SIAF2024 未来劇場
札幌国際芸術祭2024は、2024年1月20日~2月25日で開催された芸術イベントです。2014年から3年に1度の間隔で開催されていましたが、中止と延期を経て6年半ぶりの開催となりました。今回の展示会は『LAST SNOW』という共通のテーマのもと、札幌市内にある複数の芸術関連施設が連動して展示を行っています。
展示会場は、未来劇場(東1丁目劇場施設)を筆頭に、北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、モエレ沼公園の中核となる施設、その他にもサテライト会場として市内に複数の展示会場が設置されています。今回訪れるのはメイン会場となっている未来劇場会場です。未来劇場(東1丁目劇場施設)は、劇団四季のミュージカルホール『札幌四季劇場』として使われていた建物です。
入場料
区分 | 前売パスポート | パスポート | 個別鑑賞券 |
---|---|---|---|
一般 | 2,500円 | 2,700円 | 1,500円 |
市民・道民 | 1,800円 | 2,000円 | 1,500円 |
学生(高校生以上) | 1,000円 | 1,200円 | 800円 |
入場するには、SIAF共通パスポートと個別鑑賞券の2パターンあります。共通パスポートは有料会場が全て会期中に何度でも出入りすることができて、一般2,700円、学生1,200円となっています。共通パスポートを利用すると、会期中は無制限で再入場が可能となるため、スキマ時間でも組み合わせて展示を見学することができます。
はじまりの雪
最初の展示は『はじまりの雪』という展示です。100年後の未来に向けて、これからどのように生きて行くのか。近未来的なアート作品に触れて、100年後の世界を想像してみるという展示です。
まるで機械生命体?!
チェ・ウラム氏の『穴の守護者』という作品です。アニメやゲームの世界では未来を表す事柄として『機械生命体』という存在が登場することもありますが、そんな機械生命体を「実際に作ってみたら・・・」という作品です。身体に生えた羽根がゆっくりと羽ばたく様子が、まるで生きているかのように見えるという不思議な作品です。
防護服の成れの果て
『素敵に枯れていきたい、君と。』です。世界的な感染症の大流行によって必要とされ一時は品薄になった『防護服』を素材として使った作品です。制作者の考える未来というのは、どうやら明るい未来というよりはディストピアの世界なのかなと思いました。
底なし床
『無限の穴』という作品はとても分かりやすい作品です。星新一のショートショートにも登場する『穴』です。鏡の反射を活用した作品でまるで底なしの穴となっています。ただ、星新一のショートショート『おーい、でてこい!』を読んだことがある方だと『入り口があれば出口がある』という不気味さを感じるかもしれません。
人が歩き出す
階段を降りて奈落の下の展示スペースにやってきました。奈落の底という光が少ない環境を活かして、光を当てることで浮かび上がるというギミックのある『In motion』という作品が展示されていました。回転する輪に光が当たると断面には歩く人が浮かび上がるといういつまでも見ていられる作品となっていました。
ガラス細工のウィルス
『starting from light coming back to light』という作品は、ウィルスが空気中を漂っている様子をガラス細工を使って視覚化した作品です。本来目には見えないウィルスが見えていたとしたらこのように見えていたのかもしれません。
菌やウィルスなど目には見えないものを何でも目に見える形にすることができます。目には見えないものの生命の営みがたしかにそこにあるという事を再確認させてくれるような作品でした。
劇場をフル活用した展示空間
未来劇場は劇場ホールを間仕切りを使って展示会場として使っているため、舞台の上であろうと奈落であろうとスペースは有効に活用しています。劇場として使われている普段は立ち入ることができないところまで入ることができるとても珍しい機会となっていました。
舞台裏にある控室も部屋ごとに作品が展示されていました。宇宙に届けるメッセージを投稿したり、未来に向けて『DNAを残す』ことの是非を問うたり、紛争が起きていることに対してAIが考える合理的な解決策を検討したり、未来ということに対しての展示が続きます。
今ある危機
展示の前半は未来への展望をアートとして展示していたのですが、後半は『今ある危機』に焦点を当てた展示となっていました。未来への展望はある意味では架空の存在でした。今ある危機は実際に起きていることを振り返る事になりました。
氷が溶けないように
ジョヴァンニ・ベッティ氏とカタリーナ・フレック氏の『Invisible Mountain』という作品です。会場の天井からぶら下げられていた大きなシートは『ターポリン』という断熱性のある特殊なビニールシートです。溶けていく氷河の氷を解けないとうに保護するのに使われています。根本的な原因が解決しておらず、目先の解決として大きな布を掛けてまで保護することに意味があるのかという視点もあれば、根本的な問題の解決には時間がかかるから、復旧できないほど壊滅することを先延ばしにするのは良いことだという視点もあると思います。『氷が溶ける』という問題に対して考える切っ掛けとしての展示となっていました。
森林
クアヨラ氏の『Remains: Vallée de Joux』という作品です。森林をレーザースキャナーで読み取ったものをプリントしています。風景画家が目を通して写実的に描いていたイラストを現代の技術で描くことに取り組んだという作品だそうです。
国松希根太氏の『WORMHOLE』という作品です。虫食いというタイトルの通り、立ち枯れてしまった木を再現した作品です。『環境破壊』を視覚的に表現しているということのようです。
大きな花
チェ・ウラム氏の『Red』という作品です。赤い客席の中に開閉する大きな花が飾られています。ステージの上から見る客席の赤色と赤い花の組み合わせはとても印象的でした。この大きな花も防護服の素材で作られています。
LAST SNOW
展覧会全体のテーマにもなっている『LAST SNOW』のコーナーへと入りました。未来劇場の会場の展示終盤にタイトル回収がありました。
未来は雪まつりの開催が危うい説
近年は気温上昇に伴い札幌でも降雪量が減少してきています。降雪量が減ることは日常生活の中では雪かきの回数が減るなどのメリットもあるかもしれませんが、雪まつりを開催したり、スキー場でスキーを楽しんだりするには不都合もあります。なんとこのまま一定の間隔で降雪量が減り続けると、雪像づくりのための費用が2倍にも3倍にもなってしまうことが予測されているそうです。そうなっては欲しくはないのですが、雪まつりなのに雪が原因で会場の規模を縮小するか中止するかという決断をすることになってしまうかもしれません。
雪の結晶を降らせよう
プログラミングで雪の結晶を作ってみるという体験コーナーも設置されていました。未来を担う人材を育成するために、プログラミングで綺麗な雪の結晶を作るという取り組みやすいテーマを設定したそうです。
雪まつり会場の展示
さっぽろ雪まつりの会場にも札幌国際芸術祭2024の展示が行われています。夜になるとライトアップが行われて日中よりも見た目も華やかになっていました。
不思議な造形のバルーンは『AIRSHIP ORCHESTRA』という作品です。宇宙からやってきたキャラクターたちが光と音に反応して色が変化するという仕組みになっているそうです。雪像が展示されている雪まつりの会場の中ではバルーンアートはこれまでになかった展示で珍しさがあります。今後雪が足らなくなったときにはこのような『雪に頼らない』展示で雪まつりを開催するということも選択肢になってくるのかもしれません。
おわりに
今回は札幌国際芸術祭2024の未来劇場会場を訪れました。未来劇場という名前が付けられている通り、近未来的な展示とLAST SNOWというタイトル回収する展示がありました。考えさせる内容や新たな発見となった内容が目白押しでとても充実した展覧会となっており、満足感のある時間を過ごすことができました。札幌国際芸術祭は3年に1度と次の開催はまだ先の話ですが、また次の展覧会のときも機会があればぜひ訪れたいと思いました。